「あ」

いつも自分のことを見ていて欲しいと思うのは。

…やっぱり、ワガママなのでしょうか。


ボーイフレンド?

「あ、火原先輩」 「え?どこ?」 「あそこ」 「あ、火原先輩!こんにちは!また昼バスですか? ここは2年の階ですよ…?」 くすくすと笑う香穂子の隣にいるのは、 同じコンクールに出場する土浦梁太郎。 「何、また間違えたんですか?前俺がいた時も間違えてたような…」 「嘘…。火原先輩って面白いですね」 「あ…あはは。そう、昼バスしに青山探してたんだけど…また間違えちゃったみたいだね。 本当に俺ってそそっかしいからさ…」 それこそ嘘だ。 本当は香穂子の姿を一目見たくてここに来たのに。 階が間違えているなんて本当は知っている。 だって【2年の教室】目指して歩いてきたのだから。 「…それにしても2人はどうしたの?何やってるの?」 「ああ…俺が、数Tの教科書忘れて。誰か持ってないかと思って歩いてたら」 「ちょうどそこで会って。私が持ってるから貸すよって言ってたところだったんです」 「そうなんだ」 「ええ。あ、そう。それではい、教科書!」 「ああ、サンキュ。…いっぱい落書き書いておいてやるから」 教科書を手渡され、土浦は香穂子の頭をぽんぽんと軽く叩き去っていった。 「落書きなんていらないよ〜!もう、そんなこと言うともう貸さないからね?」 「ハハ、冗談だって。本当サンキュな」 「わかればよろしい」 頭を押さえながらプクと頬をふくらませ怒る香穂子。 本気で怒っていないのを土浦も分かっているので笑顔でお礼を言った。 その仲の良さそうな二人を見ていて。 火原の胸にずくんと嫌な音が響いた。 土浦が去ったので残されたのは香穂子に火原。 「先輩はもう数学ないんですよね?」 邪気のない顔で笑いながら話しかける香穂子。 「ああ。…うん、そうだよ。元々音楽科だからそこまで多いわけじゃなかったけど 3年になってからは無くなったな」 「もう、本当に羨ましい!私も3年だったらなぁ…」 「むしろ、おれが香穂子ちゃんと同じ学年になりたいよ」 ぽろりと。 ぽろりと自然に口から零れ落ちた言葉。 「え…?」 「…あ。ごめん!今のナシ!ナシナシ!! おれ、ちょっとどうかしてた…!」 「……」 慌てる火原に香穂子が一言。 「でも、本当に火原先輩と同じ学年だったら素敵ですね」 「へ…?」 「だって、先輩と一緒にいると本当に面白いんですもん! 一緒にいれたら幸せですよね」 「本当にそう思う?」 「本当ですって!一緒に修学旅行とか、文化祭とか出来たらどんなに面白かったか」 「そう言ってくれると嬉しいよ!」 「本当に…叶えばよかったですよね」 香穂子の言葉は本当に嬉しくて。 そう、自分と同じことを思っていてくれることが。 けれど。 家に帰って冷静になったら、 月森や土浦とは一緒に修学旅行や文化祭の共同作業があるという事実に気付き。 あと4ヶ月遅く産まれれば、と自分の誕生日を呪う火原だった。 ------------------------------- 火原×香穂子。 火原→香穂子表記の方がいいのかも、ですが。 一応この香穂子、火原くんのこと好きです。 書きたかったのは【やきもち火原】…なのですが。 うまく書ききれずショボボン。 BACK