君を一番好きなのは俺だと信じたい。


Can't be Stopped

「香穂ちゃん、お待たせ!」 「あ、和樹先輩」 「遅くなってごめんね。帰る途中金やんにつかまっちゃって」 「ふふ、構いませんよ。待っているのも楽しかったですから」 「楽しかった?」 「ええ。さっき柚木先輩が和樹先輩が遅くなるって伝えてくれて。 それで少し付き合ってもらってたんです。ふふ、色んな話を教えてもらっちゃった」 「へぇ〜…。…じゃあ、そろそろ行こうか」 「ハイ」 確かに自分が遅くなると香穂子に伝えてくれと柚木に頼んだ。 けど…なんだかちょっと、面白くない。 コンクール終了後ようやく付き合うことになったおれと香穂ちゃん。 付き合う前から一緒に登下校は時々していたが最近は毎日するようになったんだ。 「そういえば今日月森くんに会ったよ。なんか彼、演奏変わったみたいだね」 「あ、そうなんですよ。私もこの前練習一緒にしたんですけど。 音が前より柔らかくなりましたよね。それを言ったらちょっと照れてましたよ」 「…一緒に、練習するんだ?」 「え?ええ」 「そっかぁ〜…。今度おれとも一緒に練習しよう?」 「もちろん!」 「土浦って料理うまいみたいだよね。料理が趣味ってこの前聞いて驚いちゃった」 「悔しいくらいうまいんですよ!?この前きんぴら食べさせてもらったら本当自信なくしちゃった…」 「…そんなにうまいの?」 「かなり本格的です。なんか作りすぎちゃったって言われてもらったんですけど」 「へえ…食べてみたいなぁ」 「…この前志水くんが芝生で寝ているのを見かけたんだけど。 そのときは暖かかったからいいんだけど、ちゃんと起きれたかなあ。 起こしてあげればよかったかなってちょっと後悔してたんだよね。風邪引いてなきゃいいけど…」 「あ、それってこの前の火曜日じゃないですか?」 「…えっと…。そう、そうそう、火曜日!あれ?なんで香穂ちゃん知ってるの?」 「私、多分和樹先輩が見た後目撃したんですよ。風邪引いちゃうかな〜って思ったんですけど あまりにも可愛い寝顔だったのでついつい眺めちゃってて。結局起きるのを待っちゃいました」 「…………」 …面白くない。 月森くんと一緒に練習する、香穂ちゃん。 土浦の料理を食べる、香穂ちゃん。 志水くんの寝顔を見ている、香穂ちゃん。(逆じゃなくてよかったよ、本当) …それでも激しく、面白くない。 おれって、こんなに了見狭かったっけ。 こんなに、嫉妬深かったっけ。 「…和樹先輩?」 黙ってしまったおれを心配してなのか香穂子ちゃんが俺の顔を覗き込む。 思わずその唇に口付けた。 「ッ!?」 「………」 最初は少し驚いて暴れていたけど、自然に香穂ちゃんの動きは緩くなっていって。 最後はおれの背中に手を回して添えてくれた。 名残惜しかったけれど唇を離すと、赤い顔をしながら香穂ちゃんが俺を軽く睨んでいた。 「きゅ、急に…どうしたんですか…」 「したかったから。面白くなかったから」 「おもしろくなかったって…?」 「だって。だって香穂ちゃん凄いみんなのこと良く知ってる。 仲がいいってことは良いことだってことくらいおれ、知ってる。でも…。 でも、なんか香穂ちゃんから男の子の話されると嫌なんだ。 こんなこと言ってるおれ自身も嫌なんだけど…」 なんか本当に格好悪いおれ。 香穂ちゃんの前ではいい先輩で、いい彼氏でいたかったのに。 嫉妬ばかりして、本当に格好悪いおれ。 「和樹先輩、ヤキモチやいてくれたんですか?」 「な…ッ!?…うん、そうだね。…おれ、やきもち妬いてた。 香穂ちゃんはおれの!って言いたかったのかもしれない。本当、我侭だね…」 「言ってください?」 「へ?」 「嬉しいです。言ってください」 にっこりと。 とろけるような笑顔で言う彼女に。 嬉しくて、可愛くて。 彼女の細い身体を思わず抱きしめた。 「言っていいの?」 「ええ。ゼヒ」 「香穂ちゃんは、おれの?」 「ええ、和樹先輩の、です」 「嬉しい。本当に嬉しいんだけど!香穂ちゃん!!」 「…私も言っていいですか?」 「なんて?」 「和樹先輩は私のです…って」 「…もちろん!!…っていうか今までもそうだったんだけどね」 ---------------------- 「う〜ん…二人の世界」 「本当…そうですね」 「あのバカップルっぷり見ちゃえば誰も邪魔なんてしないと思うんだけどねぇ」 「ふふ…もう菜美先輩ったら。でも…本当。 香穂先輩、火原先輩の話になると凄く顔を輝かせて可愛いお顔しますもんね…」 「そそ。本当それに気付いてないのは火原先輩本人のみだって話だよ。 勿体無い話だよねぇ…。いつ気付くんだか」 火原と香穂子のバカップルっぷりを目撃した天羽と冬海は目を合わせ笑った。 「さて。これでもあげて気付かせてあげようかね」 「…菜美先輩、もしかして…」 「ふっふっふ、ジャーナリストの卵はいつでもどこでもカメラは手放せない…ってね」 天羽がカメラを手にし自慢げに微笑む。 そのカメラの中には。 二人のキスシーンと、香穂子が火原を思い話す満面の笑みの写真が入っていた。 ---------------------------- ノエ様とのSS交換…での私が貰ってもらいましたSSです。 …あんな素敵なSSにこんなの送っちゃったよう…!! 本当、すまなかった…ノエっち…!! BACK