+声が聴きたい +
「では、エド様。わざわざ送ってくださってありがとうございました」 「気にすんなって。俺が送りたかっただけなんだから」 「ふふ…。ではエド様、おやすみなさい」 「ああ…おやすみ」 女子寮の前でエドヴァルドは最近仲良くしている少女に手を振る。 笑顔でエドに手を振ったのち、彼女は寮へと入っていく。 その姿がしっかり中に入るのを見届けた後、エドも男子寮に向かうべく身体を反転させた。 「ふう〜…暖かい…暑い、くらいだな」 季節は6月。 夏に向け気温は段々と上がってきた。 「今年は…そうだな、去年は行けなかったし…アイツと湖行くのもいいかも知れないな」 先ほどまで会っていたというのに、次の予定まで想定している自分に気付き苦笑する。 ここまで、一人の人に固執することなんてなかった。 …ただ一人、幼い日々を一緒に過ごした少女以外は。 自分の父親や、出生のこともあり、エドはあまり人と深く付き合うことは極力避けてきていた。 なのに… こんなにも、彼女に会いたい。 こんなにも、彼女がほしい。 考えれば考えるほど、きりがなくて。 「はッ、本当に、どうしたんだよ…俺」 花のように笑う彼女。 基本的におっとりとしていて。 今までの自分の好みとは似ても似つかない。 前までの自分だったら、言うことをそのままずばりという オーガスタの方が好みだときっぱりと言えたくらいだ。 けれど…今は。 彼女じゃないと、ダメだ。 そう考えると、もう、彼女のことしか考えられなくなって。 気がつくと男子寮に向かっていた自分の足が。 逆方向に向かって歩き始めていた。 …そう、彼女の元へ。 君の、声が聴きたい。 俺のためだけに、その声を紡いで。 【END】 -------------------------------- なんだかみょうちきりんな偽者エド。 これで思い出のリボンイベントに続く…と言うことで。