この気持ちはなんていうんだろう?
今まで、感じたことの無い気持ち。

お前にしか…抱かない、感情。

+jealousy+

最近日課になっている。 放課後、気付くと足を向けてしまう場所。 …美術準備室。 また今日も彼女は慣れない書類と闘っているのだろうか? そんな彼女の姿を想像し、御堂一哉はふ、と笑みを漏らした。 美術室に近づくにつれ聞こえてくる声。 …声? その音に眉をひそめ美術室のドアを開ける。 一人は間違えるはずもない彼女…鈴原むぎの声。 あとは…誰だ? 美術室を抜け準備室のドアを開けると…そこには。 鈴原むぎと楽しそうに話す男子生徒が…二人。 「あ、かず…御堂くん、どうしたの?」 「ええっ!?御堂さん…!」 「こんにちは、御堂さん」 御堂の名前を家にいるときに呼ぶ『一哉くん』で呼びそうになり慌てて訂正するむぎ。 しかしいきなりラ・プリンスの一人、 そしてその中の選ばれた者のみが呼ばれる栄光…ディアデームでもある 御堂一哉のいきなりの登場に男子生徒二人も少なからず動揺していたらしく、 むぎの失敗を気付くものはいなかった。 「ああ。こんにちは。鈴原先生に少し用があったものですから。 すみません、今はお邪魔でしょうか?」 「え?ううん、皆がいていいんだったら全然構わないけど。 もし人に聞かれてまずい話なのであれば…もう少ししたら、になっちゃうけど」 二人に気を使ってかむぎはここで話せと促す。 それに慌てたのは男子生徒の方で。 「えぇ!?いや、いいですよ!僕達こそ大した用じゃなかったし!」 「そうですね…では、そろそろおいとましましょうか。 先生、お邪魔してすみませんでした」 「え?あ、全然!楽しかったよ。こちらこそありがとう。またね、坂巻くん、樋山くん!」 「うん!じゃあ先生、ばいばーい!」 「では」 慌てて去って行く坂巻、樋山と呼ばれた生徒達にむぎは笑顔で手を振る。 それは先生として正しい行為。 しかし…。 なんなのだろう?この気持ちは。 ドアが閉まったあとむぎはふぅっと一息つき、背中を伸ばしながら御堂に振り向いた。 「それで…一哉くんはどうしたの?」 「え?」 「え?って…。何かあったから来たんじゃないの? さっきも『用があった』って言ってたし」 「ああ…」 そういえば。 咄嗟にそんなことを言ったと思い返す。 「そういえば。さっきのやつ達は誰なんだ?」 「ん?ああ、坂巻くんと樋山くん?」 「ああ」 「J−3の子達だよ」 「ほう」 「髪の毛がくるくるしてて可愛らしいのが、坂巻くんね」 「…」 「可愛いって言っても実は私の方が年下なんだよね、なんだか変な感じ」 「……」 「んで、もう一人のクールな方が樋山くん」 「…随分仲がよさそうだな」 御堂にしてみれば少し、嫌味のつもりで言ってみたのだがむぎには通じず顔をほころばせた。 「仲良く見える!?」 「…ああ」 「嬉しいなぁ…!本当に最初の授業で受け持った人たちでさ、 凄いヘマばっかしてて凄い馬鹿にされてたんだよね」 「…」 「樋山くんになんてさ、本当に全く信用されてなくて。 二人っきりになった時イジワルな質問されたりしちゃって大変だったんだよ」 ぷち。 御堂のナニかが切れた。 「二人っきり…だと?」 「うん、最初の授業の後でねぇ…美術準備室に入ってきて。 いきなりデッサンの質問されちゃってさ…困ったよ。…って、えぇ!?」 「…黙って」 慌てるむぎの口を塞ぐ。 御堂の…それで。 「んん…っ!」 急だったため、呼吸が苦しくなりむぎが小さく唸る。 そして最初は暴れていたのだが…諦めたのかむぎが腕を下ろした時…御堂が唇を離した。 「…な、急に、どうした…の?」 「面白くなかったからな」 「…?」 そう、面白くなかったのだ。 彼女の口から自分以外の男の名前が出てくるのが。 微笑むのが。 二人きりになっていたという事実が。 …面白くなかったのだ。 そんな御堂の様子をぽかんと見ていたむぎが急にくすくすと笑い出した。 「…どうした?」 「…だって。一哉くん、やきもち…やいてくれたんでしょう?」 「やきもち…」 「うん。嫉妬してくれたなんて、嬉しいなぁって。いっつも嫉妬してるの、あたしの方だから。 なのに今回逆みたいだから…なんか嬉しくて」 「嫉妬…」 嫉妬。 御堂の頭がフル回転して己が知る限りの『嫉妬』の意味を考える。 しっ‐と 【×嫉×妬】 ------------------------------ [名](スル) 1 自分よりすぐれている人をうらやみねたむこと。 「他人の出世を―する」 2 自分の愛する者の愛情が、他の人に向けられるのを恨み憎むこと。 やきもち。悋気(りんき)。「夫の浮気相手に―する」 ああ、1ではないから2か。 そうか、俺は坂巻や樋山に嫉妬していたのか。 今までどんな女と付き合っても感じることの無かった感情。 そう、それは…むぎだから。 「…お前、すごいな」 「へ?何が?」 「俺を本気にさせて、だ」 「??」 この気持ちを言うのは、まだ早いけれど。 もう、離しはしない。 離せない。 【END】 -------------------------------- 御堂×むぎ付き合っているルートのひとこま(?) 全然甘くない…。 そして最後はシリキレトンボ…。 フルキスは面白いけどSS書くの難しいカモ…。 これで旅館イベントに繋がる…みたいな感じにおもってくだされば。